祭祀クーラスの憂鬱
おぼろん

戸外では叩きつけるような雨が降っていた。祭祀クーラスは、
一人考え込むように、チェザリの盤面を見つめている。
時折雷鳴がとどろいた。しかし、クーラスは動じない。
ふと見上げると、蠟燭の炎がゆらめいていた。

そこに、千人隊長となったフランキス・ユーランディアが入ってきた。
「いつにない雨模様ですな。この時期に雨が降るのは珍しい……」
「お前は天気を心配するのか? 雨は忌むべきものではない」
「しかし、鬱陶しくはあるでしょう。ねずみのように」

「ねずみか。ヨラン・フィディコを取り逃したようだな?」
「ふむん。奴は一介の盗賊に過ぎますまい。何か心配ごとでも?」
「わたしには、ない。しかし、国家には、ある」クーラスが言う。

「国家の心配ごとですか。御身も今は、クールラントを支配する身。
 憂慮は、御身の実力でもって排除できましょう」
「エインスベルを除けばな……」祭祀クーラスは憂鬱げに呟いた。


自由詩 祭祀クーラスの憂鬱 Copyright おぼろん 2022-07-10 18:32:15
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