オスファハンと侍従長(二)
朧月夜
アーゼン・クラウトとは、ヒスフェル聖国の闇の組織である。
その影の仕事によって、ヒスフェル聖国は小国ながらも、繁栄してきた。
しかし、オスファハンにはアーゼン・クラウトを取り仕切る力はない。
今も、どこかで間者が聞き耳を立てているかもしれない。
オスファハンの邸宅は、彼の私邸だ。官邸ではない。
どの召使が本当の意味での味方か、それともスパイなのか、
オスファハンにも推し量る術はなかった。
「盗賊の行動など、好きにさせておけば良いのだ」
「では、アースランテの件はどういたしましょう?」
「アースランテはすでに復権を画策している。
武力行使が始まるのも、そう遠い未来ではないだろう」
魔導士オスファハンは憂慮すべき顔色を見せた。侍従長が不安になる。
「それではやはり、クールラントに政変を起こさせようというのですね?」
「その問いには答えまい」オスファハンは、慎重を期するように答えた。
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クールラントの詩