オスファハンと侍従長(一)
朧月夜
「オスファハン様、どうしてあのようなことをお話しに?」
石造りの牢獄を出ると、オスファハンの侍従長が待ち構えていた。
「控えていろと言ったはずだ。命令が聞こえなかったのか?」
「はっ。それは心得ております」侍従長グルー・レアンが膝をついて答える。
「盗賊風情に何が出来る。それに、奴らは魔法石の秘密を知らない。
たとえ、虹の魔法石を手に入れたところで、何が出来る」
「では、例の秘密についてはお話しにならなかったのですね?」
「そうだ。そなたも聞いていたのであろう」オスファハンは舌打ちした。
「はい。会話の一部始終を。それで、これからどうするおつもりで?」
「もし仮に、あの盗賊が虹の魔法石を手に入れたとしても、
使いこなせるのはエインスベルだけだろう」
「火中の栗は、クールラントに拾わせるということですか?」
「そうだ。我は今、エインスベルを養女とは思っていない。一介の兵士だ」
「承知しました。アーゼン・クラウトにも情報を浸透させておきましょう」
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クールラントの詩