盗賊ヨランの旅(十二)
おぼろん

「祭祀クーラスは何よりも政治を重んじる人間です。
 ですから、前言を翻せば、多くの者が彼から離反すると心得ているのです。
 今、エインスベル様は、アースランテとの戦争を引き起こした、
 政治犯として収容されています。勝手に彼女を殺すことは出来ないのです」

「つまり、裁判を待たねばならないということか?」
「そうです。その裁判は、次の満月の夜の前日に、行われることになっています」
「お前はどこからそんな情報を……」エイミノアは唖然とする。
「盗賊たちの情報網から、とだけ言っておきましょうか」

「エイミノア様。わたしがこれから誰と会おうとしているか、ご存じですか?」
「何を言う。我々は魔法石を探している旅の途中なのだぞ。誰に会おうと言うのか?」
「ヒスフェル聖国の正魔導士、オスファハンです」

「何と! エインスベル様の師と? お前にそんな伝手があるとでも言うのか?」
「理由は何とでも出来ましょう。これからわたしたちが彼に会う、とうことが重要なのです」
「そんな器量がお前にあったとはな……エインスベル様の従僕だけのことはあるか」


自由詩 盗賊ヨランの旅(十二) Copyright おぼろん 2022-07-03 03:14:13
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
クールラントの詩