盗賊ヨランの旅(三)
朧月夜
「奴の自負などどうでも良い」と、エイミノアは思っていた。
「奴は、ただ逃げようとしているだけではないか?」と、
ヨランからは離れたところに寝所をしつらえながら、エイミノアは思う。
「盗賊の考えなど、たかが知れている。己の利益ばかり追い求めるのだ」
時刻は入日が過ぎてしばらく経ったころである。
辺りも薄暗くなってきている。
「この辺りには魔物などは出ないのであろうか?」
エイミノアはふと不安に駆られる。そんな横で、ヨランは寝息を立てている。
エイミノアは耳を澄ました。何者かの鳴き声が聞こえる。
エイミノアの肌はざわついた。「あれは……グルレッケだ!」
グルレッケとは、蛇の頭と鳥の羽を持った怪物である。しかも、一頭ではない……
「おい、起きろ、盗賊。グルレッケが襲ってきた!」
「起きていますよ。エイミノア殿。そのための準備はしておきました」
「なんだと?!」そう言った途端、彼らの周りで炎が炸裂する。
この文書は以下の文書グループに登録されています。
クールラントの詩