涙がこぼれたら
入間しゅか

かすみ草が
軽口をたたくように
洗濯物は風に揺れて
迷うことはよいことだと思う
右頬をつたう涙に
うつらないせかいがあるとは
全くもって知らなかった
紫陽花色のかなしみには
ちょっぴりビターなコーヒー
がよく似合う
嗚呼、答えの出ない問いに
応える必要はひとつもなかった
わたしは燕が低く飛ぶように
浅く深い呼吸を刻む
乳白色の陽光が
まっすぐとハイウェイにのびる

こんなにも
生きた証を辿りたくなるなら
写真をもっと撮ればよかった
レースのカーテンが
暖かい陽のひかりを
吸い込んでいる

窓を開けて
ポケットいっぱいの
かなしさに別れを告げたなら
そっと頬に触れるように
ほらね、なんかいい風


自由詩 涙がこぼれたら Copyright 入間しゅか 2022-06-17 04:48:08
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