白い景色の中で
メープルコート



 満天の星空が、朝靄の中に静かに消えてゆく。
 鳥達はいつもの歌を歌い、季節の花達はその手を広げている。
 誰かの魂と私の魂が共鳴しては離れてゆく。
 キャンバスの淡い白色は歩き始めた娘の未来を暗示している。
 さぁ、行こう。
 道端に落ちている誰かの幸せを胸一杯に抱えながら、
 その人達に祈りを捧げている。
 幸せの細かな粒はまるで海の砂の様だ。
 ひと風吹く度に手の平から空へと舞い上がり消えてしまう。
 まるでそれは忘れられた人達のようだ。
 私もその一人。
 気が付けば暗闇に吸い込まれてしまう。
 過去が美化されればされるほど、未来への希望を失ってゆく。
 今を必死に生きているだけなのに。
 人生は平坦ではないけれど、気を抜くとすぐに躓いてしまう。
 躓いた先に美しい芸術さえあれば。
 私は考える、何かに見守られている、と。
 新しい朝はいつも憂鬱だけれど、それさえも私は信じる。
 私は信じる。今を。明日を。何より私を。
 朝靄の中、静かな音楽が聴こえる。
 幸せな者達の歌声が朝靄に溶けてゆく。

 


自由詩 白い景色の中で Copyright メープルコート 2022-06-16 07:36:13
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