囚われのエインスベル(九)
朧月夜
「祭祀クーラスの現状をご存じでしょうか?」盗賊ヨランが言葉を継ぐ。
「知っている。戦争の咎のすべてをエインスベル様に押し付けて、
国家の敵として、告発するつもりでいる……」
「そうです。わたしも、それを防ぎたいのです」
「さっきも言ったが、重要なのは、あくまでも証拠だ。
今のエインスベル様は、とても厳しい立場に立っておられる。
このままでは、祭祀クーラスの独裁ということも……」
「あなたも、それを憂いていなさるのですね?」
盗賊ヨランは微笑した。勝利の微笑だった。
「何か、祭祀クーラスを止める手立てはないものか?」リグナロスは言う。
ここまでは、彼も穏便な手段を思い描いていたのである。
しかし、リグナロスは一介の監守。政治に口出しすべき立場にはない。
すべてがイレギュラーな事案だったのである。この時点では、
リグナロスがエインスベルの供となることは、想定されていなかった。
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クールラントの詩