囚われのエインスベル(八)
朧月夜

「こんにちは。わたしはヨラン・フィデリコ。
 エインスベル様の側近でございます。今日は、
 あなたにとって重大な用事で参っております」
盗賊ヨランは、おもむろに口を開いた。

その時に眼前にあったのは、リグナロス・アルテである。
ねめつけるような表情で、リグナロスはヨランを見返す。
何事か、姦計があるのではないか、という疑わしげな表情である。
「盗賊風情が、エインスベル様に何の用か?」

「それでございます。エインスベル様は、祭祀クーラスに命を狙われております」
リグナロスは息を呑んだ。これは極秘事項である。
「祭祀クーラスは、法の手によらず、エインスベル様を葬る手立てを探っているのです」

「それを証する……証拠はあるのか?」リグナロスが詰め寄る。
「それです。事態は一刻を争うのです。証拠ごときが、何の助けになりましょうか?」
リグナロスは唸った。「何をもって、お前を信用せよと言うのか?」


自由詩 囚われのエインスベル(八) Copyright 朧月夜 2022-06-02 21:46:53
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
クールラントの詩