六月
soft_machine
花の中で にぎやかな
虫たちの胸に
汲みあがった 蜜を
言い表す ことばはない
真昼の 宇宙の
香りをまとい
きらきら踊る
途切とぎれの 感情
そして飛び去る
張りめぐらされた
網の目の 雫を吸い
甘い空缶を くぐり抜け
林の果にひらくという
いち枚の葉裏で
濡れた鱗粉を
しずかに乾かせる 六月
わたしは 走る
あなたの 電離を
確かめに 落下する雲に
今年はじめの蜉蝣が
無事に離水した
こんなにうれしい舞は
見たことがない
魚たちも
鳥たちも
誰も狩らずにいて欲しい
あの空に
音なく降る 雨の中
細く砕かれた 雫と
還る さびしさも連れて
薄い影はいらない
六月