2022年5月16日
ゆるこ


油の切れかかった自転車をゆっくり蹴りながら
初夏を孕んだべたついた風を浴びて夜道を滑走する
切れかけたワイヤレスイヤホンはぶつぶつと呟き
月は電池が切れるのと同時に空に喰われる

昨日はガス管の工事で
今日は水道管の工事で道が手術を行なっている
べろりと捲られた地層の横で
人工物の光が低い花火を何発も上げている

三角コーンの先にぐるりと回る赤いランプは美しい
人が作った巣の中ではまたライトに照らされた人々が影を落とし
ゆらゆらと揺らめく、擦り硝子の向こう側に常
得体の知れない星たちがアスファルトに映り、消えて行く

夜は、呼吸音を確認する為に鮮やかな首をひしゃげて居り
死んだような揺らぎを何処からともなく与えゆく
静かな祈りのような其れら
自転車のライトがちかちかと笑う

自販機でビールを買う
汗ばむコインと、指先に力を入れ
微睡みの夜を全て喰らいつくそう
明日また生きていくために



自由詩 2022年5月16日 Copyright ゆるこ 2022-05-16 23:06:10
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