Forward Jerusalem
TAT
音楽は人生と結び付く
不意に
確かに
無責任に
永遠に
消えない一生傷を
音楽は魂に刻み付ける
不意に
確かに
無責任に
永遠に
俺が保育園の時
うんどう会の出し物で
鼓笛隊の太鼓と
ハーモニカの稚拙な調べが
秋空に響いた
それだけの事で
祖母の涙が止まらなかった事がある
パラパラと細かい豆を地面に叩くような太鼓と
プーピー鳴るハーモニカの音に
戦争の時代の自分と兄が重なったんだと
そう言って泣いて泣いて泣いていた
カチンと来た時に頭の中で鳴る曲がある
優しい気持ちになった時に鳴る歌
悲しい時に聞こえてくる旋律
高校の頃に聞いた歌
小遣いをはたいて初めてライブに行った夜に
アンコールで聴いた曲
テレビで見たのと同じ
本物のアーティストが
まるで神様みたいに
ステージに現れた夜
帰り道に嗅いだ
河の傍の
夏の草の匂い
出来なかったキス
まるでニッケルバックの
「フォトグラフ」のPVみたいだ
音楽は人生と結び付く
取り出したレコードの埃を払い
B面をセットして針を落とした日
爪を折ったカセットテープを
ウォークマンに差し込んだ日
店で聞こえてきて
すぐに有線に電話して
歌手と曲名を聞いた曲
CDの五曲目を
リピート演奏にして
プレイボタンを押した日
シャッフルプレイで
iPodを聴きながら
深夜の国道を
走り続けた日
スマホのプレイリストに
好きな曲を目一杯詰め込んで
よっちゃんをデートに誘った日
ばあちゃんが死んだ日の帰りに
寄ったアピタの駐車場で
大道芸人が
アコーディオンで奏でていた調べ
歌である必要はなく
曲である必要もなく
旋律である必要すらない
それでも音楽は人生と結び付く
それはまっすぐな細い光になって
ゆく道を照らすだろう
それは太い光の束になって
来た道を示すだろう