女學生日記 十六
TAT
五月九日 火曜
天氣 晴
起床 六時二〇分
就床 十時三九分
此の頃は毎朝早く起きて裁縫をやります
時間割變更 一限 数學 二限 國語 三限 裁縫 四限 音樂 五限 図画でした
数學の時 此の間のやうな試驗がありました
お晝休みに身長を計つて戴きました
百三十九センチメⅠトルでした
跳び箱がとべるやうになつて嬉しかつた
図画の時間 中野先生より「聯隊旗」といふお芝居のお話しをして戴きました
放課後は二年だけ運動「胡蝶」のダンスを習ひました
ピアノを習つて家に歸りました
夜お風呂へ入つて勉强をすまして寢る
五月十日 水曜
天氣 晴
起床 六時〇分
就床 十時三〇分
理科の時間に中野先生から面白いお話しをしていただきました
作法は教室で致しました
放課後は教室のお掃除をすましてから國語の書取りの練習をしました
明日は遠足です
水筒もおすしを持つて行けるので大喜びです
夜おすしを作つて来て寢ました
五月十一日 木曜
天氣 晴
起床 六時〇分
就床 十時二七分
學校のお辨當をしらべる時 何時の間にかキヤラメルが入つてゐた
今日にかぎつてお母さんにつつんでいただいたから知らぬ中に入つてゐたのかも知れない
早速 花村先生に譯をお話ししておあづかりしていただきました
行く先は迫間の瀧でした
大きな山を越えたらとてもえらかつた
不動さんにお參りしましたが岩の中でとても気味が惡い所だつた
かうもりが飛んでゐた
お辨當を篠塚さんと一緒に食べました
おすしを十六も食べたのでお友達に笑はれました
五月十二日 金曜
天氣 雨
起床 六時二分
就床 十時二〇分
習字は半紙に書いて出す
理科は中野先生が関東旅行で居らつしやいませんから裁縫に變更する
体操の時間 飛箱の上から落ちた
これで三度目です
関節の所をうつて足をすりむいたので中々やめる
足をのばしたり ちゞめたりする度に きや〳〵と痛む
修身は國語に變更しました
福本先生で今まで讀んだとか讀んでゐる新聞 讀みたいと思つてゐる書物の名等と現代文學のお話しでした
五月十三日 土曜
天氣 晴
起床 六時十二分
就床 九時三〇分
数學は試驗でした
英語は宿題が出る
裁縫は始めて下の第一裁縫室で致しました
放課後 飛箱を練習しやうと思ひましたが落ちてから余計こはくなつてどうしても飛べません
我ながら情けなくなる
歸る時 男の子がいつぱいよつて居ましたから何事かと思つて見てゐたら茶色と白色の毛で足先と鼻先のちよつぴり黒い大きい耳のだらりと下つた かはいゝ仔犬を縄でしばつて水の中へ入れては いぢめてゐる所です
「可哀さうですからお止しなさい」と言つてもぶる〳〵ふるえてるのを無理に引づつて河の方へ行きました
可愛さうな仔犬よ うらまないで
五月十四日 日曜
天氣 曇
起床 六時二〇分
就床 十時三九分
朝起きてからお二階の大掃除をして色々お使ひに行きました
母が台湾の叔母さまをお迎へに十一時三十五分の自動車で行かれました
お晝からあの仔犬の事が心配になつて行つて見ましたら居りません
どこへ行つたのでせう
死んだのでせうか
逃げたのでせうか
どうか生きて居て呉れるやうに
母が居りませんから御飯をたいたり お辨當をつめたり致しました