それぞれの戦い(八)
朧月夜

そのころ、というよりもその少し前、
ヒスフェル聖国軍は、ラゴス・クールラント連合軍の
南西に布陣していた。遊撃隊の役目を果たすためである。
敵兵の数は、こちらの戦力のほぼ倍である。

もしも完全な包囲陣を敷かれたら、
連合軍の敗北は避けられなかったかもしれない。
しかし、アースランテ軍の指揮者は有能だった。
精悍な兵たちを前線に置いて、中央突破を図ったのである。

というのは、包囲陣は、ともすれば各個撃破の危険性にも
さらされかねないからである。「我が軍が参戦したことも、
重々承知の上での戦術というわけだ」オスファハンは呟く。

オスファハンは主に後陣への攻撃を命じた。
しかし、多重結界を張ることは今回はしなかった。多重結界を敷けば、
多くの魔法素子を消費してしまうことになるからである。


自由詩 それぞれの戦い(八) Copyright 朧月夜 2022-05-08 16:54:00
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クールラントの詩