逆さまの月
凪目
こんな時間に起きて水面を覗き込んでる
からっぽのコップに見えない水が見える
きみの水面にうつるのは
いつも何回か殺されたあとのぼく
ぼくもまたあなたを殺した
何度も
ぼくはきみの目
きみの怒りを知っている
きみの激痛と空白を
長い祈りを
ぼくはあなたの中にいる
あなたのかばうものの中に
絡めとられたかなしばりを破壊のつぼみに変えて
音のない叫びを泳いでいる
きみはぼくに名前を与えて
何度も呼んだ
呼ぶごとに
たなびいて消え失せる名前
永遠のおいかけっこ
それももう終わる
ぼくの持っている少しだけのもの
きみにわけられるすべてはここにある
からっぽの間
そこにだけ