灯火
ひだかたけし

今宵、懐かしく
灯が点り
生まれたばかりの感情が
せわしくせつなく
揺れている
(遠い故郷を追いかけた
夢見の中に居るように
深い夜は透明な
滴に濡れて更けていく)

 心の底の永劫を
 いつしか生きた感触が
 点る灯火にせつなだけ
 予感に充ちてよみがえり

今宵、向かいの
灯が点り
動き交わる人影が
たましいの奥処の祭壇に
確かな孤独を刻んでいく









自由詩 灯火 Copyright ひだかたけし 2022-05-05 18:56:05
notebook Home 戻る