連合軍の反撃(十六)
朧月夜

ヒアシム・カインを放ちながら、エインスベルは笑っていた。
彼女が「カーガリンデの魔女」と呼ばれるようになった契機である。
もちろん、そこには恐れと軽蔑がないまぜになった、
感情が込められていた。彼女は、世界を破滅させるやも知れぬと。

エインスベルの師オスファハンは、急ぎエインスベルの元へと出向いた。
「今すぐその呪文を止めよ、そうでなければ取り返しのつかない事態になる」
「なぜですか、お師匠様。わたしは敵を葬っているのです」
「敵か味方か、それが誰に分かる? いずれ味方になるやもしれぬ連中だ」

「わたしは、この世界の真実を求めているのです。
 戦に駆り出されるのであれば、戦をし、人々の命を奪うだけです」
エインスベルは平然と言い放った。オスファハンは顔をしかめる。

「見よ、そなたの魔法石には亀裂が入っている。やがて砕け散るだろう」
「かまいませぬ。魔法など、わたしの復讐の手段にすぎなかったのです。
 今、誰に救いの手を差し伸べてもらえましょうか」エインスベルは呟いた。


自由詩 連合軍の反撃(十六) Copyright 朧月夜 2022-05-05 10:20:16
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