スモールライト ディレイ・ディレイ・ディレイ
竜門勇気


悪い癖だとわかってる
ぐちゃぐちゃに酔っ払ったあと
布団にまぶれついて
君が生きてるかどうかについて考える
開け放した窓から重たい空気が入ってくる
僕は君には拒絶された
僕は何年もたって連絡先を残したすべてを
燃やしたり、破いたり、削除しますか?はい。みたいなことをやった

命のある限り忘れられないことは
もうそんなもんだと思って
付き合っていくしかない
化合物はシナプスと同じで離れたときには
思い出せないぐらい遠い存在でいれる

でもそうじゃないまま
死んでいくときに
でもそうじゃないまま
生きていこうと思ってるときに
何もかも邪魔なだけ
僕は邪魔なものはいらないよ
あんたはどうなの?

朝になってひどい憂鬱に囚われながら
歯を磨いているとき
世界でいちばん偉い人物になってるような気がする

何度やっても玄関で靴紐が結べなくて
靴紐が結べられることが怖くて

どこにも行けなかったあのとき
僕は僕が終わるための大事な第一歩を踏み出したように思った
小さなものが大きく見えた
大きな存在があることがわかってて
それがなぜか無意味に見えてたから
なぜだ?わからない
宇宙があることがわかっていながら
空を見上げているようなものかもしれないし
全く見当外れな静止かもしれない

どこにも行けなかったあのとき
僕は僕が終わるときのために最後のエンドロールのための
物語を作ろうとしていた
薄ら寒い関係の集まりの中波止場で足を滑らせて
もがくこともなく海面でざわつく声をきいて、エンド
今日世界は終わるから帰るよ
そんなこと言って終わらない世界のかたすみで
酔っ払っていくだけで、エンド
今は、片田舎の工場で働いてわかりやすい悩みを抱えて
ただ解消されない爆弾を抱えて生きる
どこにでもいる時代遅れのネジの一つだよ
列を振り返れば次を待ってる奴らが
ネジになりたがって殺気立ってる

僕がいる場所はそんなに
魅力的に見えるかい?
先延ばしにいつまでもできるなら
そんな妄想でも
君を生かし続けるだろうけど



自由詩 スモールライト ディレイ・ディレイ・ディレイ Copyright 竜門勇気 2022-05-05 00:05:42
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