手遊び
凪目

隕石が落ちてきて
ぶっ壊れた部屋の中
結んで開いて
狐を作って
その影と遊んでる
たぶん百年くらい
床を這う蟻を潰してる
だって象に巣食おうとするから
狐と蟻と象と
それに帽子の中に蜂がいる
もう喧嘩も飽きて
みんなして好き勝手過ごしてる
満員の狭い部屋で
ぼくはソファを見てる
ときどきおばけがやってきて
しばらく座り込んで泣いてる
ぼくはそれを見てるのが好き
コンコン
狐は言う
そんなんじゃだめだよ
こんな部屋壊さなきゃ
コンコン
ぼくは応える
そうじゃない
ここは最初からずっと壊れてる
本当のはじまりのはじまりからずっと
屋根のない天井から満天の意味が見える
ぼくが見出したいものしかうつさない空
意味はどこにもない
だからぼくには連中の声が聞こえる
結んだ手の中に
なにかある気がして
べつになにもなかった
なにもないほうが本当
なにかあると思うほうが
だけど楽しいよ
象の鼓動で
蜂の体格で
蟻の盛衰できみを眺める
ときどき泣いて
ときどき遊んで
また開いてる
その手をどこに?
どこにでも


自由詩 手遊び Copyright 凪目 2022-04-28 01:09:23
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