レム
凪目


包帯の瘤を割って這い出ると
少しの針を飲み
すぐにまたもぐってしまう
辺り一面
色とりどりの悲惨が飛び散る
ビビット、パステル、ネオン、
どろどろにしめったマーブル模様の枕が
ぬるく不浄な夢を呼ぶ

厚ぼったく
酸を帯びた吐息
皮袋中をどす黒く煙り
充満する息はやがて
鮮血を撹拌する呪詛に
なるが
車道
遠く生活を乗せたヘッドライトが図体を
浮きぼりにするだけして去っていく
実際以上に、長く、
大きく伸びた影、
くり返し轢かれてる
雨埃でひかるコンクリ
影はぐちゃぐちゃの油膜に覆われ
虹色にぎとつく
わかってるよ
ばかみたいだ
どこへでもひっついてぺしゃんこの
こいつばかりが話し相手
その先……もう知ってる
どうせお決まりのセールストーク

さんざん殴って
さんざん殴られたあと
ひなたの風だまりを
影と歩く
どこからかそよかぜ泳いで
夢の内側をよぎっていく
重なるときに鳴った音が
内側に置いてきぼりで痛い
置き土産
そらで口ずさむ
何度もまちがいながら
消えない音
風の形
なぞって覚えてる


自由詩 レム Copyright 凪目 2022-04-19 00:04:54
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