目について何も知らないけど
室町

目が立っている
女性や子どもや老人の目が立っている
狭い窓から目だけを出して不確かな外を見ている
あらかじめ時が収奪されているその目は
空のどこを見ているのだろう

きっと祈っているのだ
いつも

かつてこの国であなた方の目に気づいた人はいない
この国の人たちはあなた方の目を知らない
この国の人たちは命の大切さを語り
倫理を口にして
いい人であることに
満足している
わたしも
いい人と思われてみたい
だけど
障子紙一枚の薄い世界に加わるのは
その世界を想像するだに怖い

抱きしめたいのだ
あなたを
それからあなたを
 ダイジョウブデス、ワタシガキット守ル
口にはできないけど
ただぎゅっと抱きしめたいのだ
あなたやあなたの目について何も知らないけれど
何もできず見つめているだけだけど
ただ抱きしめて
あなた方と同じように祈りたいのだ

わたしだけにわかるひとすじの光が
その目から
かすかに見える気がするから









自由詩 目について何も知らないけど Copyright 室町 2022-04-18 09:54:10
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