即興小詩の集い
宣井龍人

 【問答相撲】
健康は命の付属品ではない
生写しではあるが別の生き物だ
今日も飛び去ろうとしてタックルした
顔を洗えば鏡に逃げ込むかもしれない
醜態を晒しても命ある限りか
尊厳を保ててこその命なのか
身体が心を裏切るのか
心が身体を裏切るのか
ハッケヨイハッケヨイ
命が尽きるその日まで


 【果物と野菜】
わかっていないようでわかっていない
みかんだかオレンジだか
ほうれん草だか小松菜だか
アスファルト畑のおじさんにはわからない

美味しくいただき舌で味わうハーモニー
生きる力ををいただき御馳走様
果物と野菜が有難く体を回る
ついでにしっかりしろよと頭を叩く


 【遠陽】
そのとき時間という観念が背後から消えていた
理由は知っていたが理由という言葉ではなかった
歩くという足の動きは私自身なのだろうか
蠢くものや湧き出すものがズリズリする
人であることを通りかかった人と確かめ合った
わからない行先を探す私を遠くから照らし続けていた


 【時の舞台】
寄せては返す波の営み
太古から刻む海の時間
投げかけた視線は月光に溶け
砂に朽ちた足跡に命が宿る
幾つもの影が立ち上がり
向き合い抱き締め合う
夜と過去に訪れた交錯の舞台
海は呼吸を止め大きく静止する
ついに永遠を手に入れたのか
七つの音が月光を舞い始めた
お や す み な さ い


自由詩 即興小詩の集い Copyright 宣井龍人 2022-04-12 21:32:06
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