五線譜の糸
由木名緒美

不器量な手だから
なぞれない象徴があった
見届けられない背中だから
言葉に出来ない痣があった

哀しみは木偶人形の口笛
哀しくて哀しくて歌が漏れる
そうやって辿り着いた音階は
成層圏での呼吸の仕方を教えてくれた

どれみ み みれど

音じゃないと測れない温もりがある


あなたという五線譜に縛られて
身体中の細胞が熱い血潮で満たされて
私は私を脱ぎ捨てて
あなたの横にくずおれる

後頭部に首を振れば
甘い三日月の夜だった

果てなく龍が渦巻くような群青の雲に覆われた

この星の円心に抱かれたい
人間の命をすべて灯すかのように
揺れる蝋燭を携えて
燃え尽きる頃
私は始めて地球に抱かれる

砂粒の一つになり砕いて巻いて最果てへ
その煙る虹が光となる頃

ようやく人間として生まれよう


自由詩 五線譜の糸 Copyright 由木名緒美 2022-04-11 18:11:52
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