春風散花
室町

霧笛にふるえる窓をひらけば

墨雲の下に何もなき地平

由緒の家々は無人の駐車場となり

運河を貨物船の影が遡(さかのぼ)る

アスファルトに病葉(わくらば)が散るこの町で

頭がおかしくなって半生をすごした

週刊誌のヌードを見ても心は動かず

コーヒーも酒もやめて

春風に吹かれながら無縁墓地を見にゆく


自由詩 春風散花 Copyright 室町 2022-04-03 08:52:28
notebook Home 戻る