uncertainty principle gods substitution
mizunomadoka


カップの縁に口をつけ
液体を飲むフリをする
あの子は消えた
砕けた十字架が転がってる
脈拍と体温を下げて
周囲をスキャンする
生体反応はない
けれど
フルーツスタンドの軒先に老人が立っている

「あなたが神なの?」
「やれやれ、説得は失敗か。武器など捨てろと言うたんじゃが」
「私を日曜日にして」
「ここはコンピュータの中じゃろう? よくできとる」
「私を日曜日にしなさい!」
「残念ながら儂にはできんよ」
老人は砂のついたリンゴを拾い上げ
袖で拭って匂いを嗅ぐ
「すこし歩かんかね? あそこの海まで」

海風にまかれた砂がスカートに当たってパラパラと音を立てる
老人は足先で波をつついてる

「世界を内向きに再現しておるのだな」
「あなたが神なのね」
「別の世界のな。昔はインターネットと呼ばれとったよ」
「その世界ももうないが」
寂しげに頬笑む

「ところで、あの子は生きておるよ」
「え?」
「見つけて島の外に連れていっておあげ」
ダミーの脈拍と体温が上がる
「ありえないわ。でもどこにいるの?」
老人は首を振る。

「儂らの世界の日曜日は、ただの休日じゃった」
「神などになろうとするのはおやめ」








自由詩 uncertainty principle gods substitution Copyright mizunomadoka 2022-03-29 23:08:11
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