原色の星
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 原色の星


水がこぼれそうな綿の中を
はしる赤い電車にのって
ここには二度と帰らないと
遠ざかる両手につぶやく週末
芽ぶくみどりの上で
火をふく工場
脱輪した三輪車
すべて閉じこめる思いでに
ただひとつかがやくレール
あふれまたがる大河にわたり
上昇するだけの波がゆれ
転轍機のそばにたたずむのは
ゆびをつないだ
おさない頃のあなた
雲の裂けめにさいた衛星、一輪
真空のにおいの影
「下り口は左側になります」
かろいアナウンスですました
山隘の終村で道はおおわれ
ホームにたたずむ戸惑いの影に
わたしもひとつ身をかさねた
黒いみおをひくつり目の舟が
別れのなみだをよした
すべてのなつかしさは
堆肥のにおいと共に来て
アスファルトを割るちかい未来
この星はみどりが復権するだろう
それをながめる他の原色たちは
ひそかに退場しながら
彼らをそだてる



自由詩 原色の星 Copyright soft_machine 2022-03-26 21:40:15
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