Thumbs up
服部 剛
僕は親指を立てて
あなたの顔に、見せる
しばらく忘れていた
Thumbs up の合図を
あなたに
僕に
この夜に
フェイスブックに
ツイッターから
インスタグラムまで
誰かの反応に飢えていたから
たくさんの「いいね」も嬉しいけれど
今夜
僕等の間で生まれる
リアルな Thumbs up ほど
嬉しいものはない
産声を上げた
あの日から
誰もが Thumbs up な命
だった
二〇二二年の寒い春を生きる僕等が
少々タチの悪い風邪にマスクをしながら
尺度の無い情報に振り回されて
自らの内に宿す
歓びの根源を忘れませんように
今も互いの血を流し合う国の戦場に
一刻も早く
平和を念ずる人々の風が
届きますように
この街の何処かで
独り彷徨う名も無い人が
笑顔を交わせる誰かと
出会えますように
僕は探している
日々のあちらこちらに見出す
Thumbs up な場面の輝きを
今、この親指を立てる
お互いの日々を密かに結ぶ
Thumbs up の合図を
僕自身に
あなたに
これから織り成されるだろう
僕等のまっさらな
明日に
※ この詩を、横浜のライブハウス Thumbs up に捧ぐ。