夏休み
山人


結露した鉄管を登ると
冷気の上がる自家発電の貯水層があり
ミンミンゼミは狂いながら鳴いていた
夏はけたたましく光りをふりそそぎ
僕たちはしばしの夏に溶けていた
洗濯石鹸のにおいの残るバスタオルの上に寝転がり
紫色になった唇で甲羅を干した
毒々しい竹煮草を蹴飛ばすと赤茶けた汁をほとばしらせ
嫌な臭いは赤土に吸い込まれていった

母は黙って軒先で草とりをしている
僕はそれを確かめると執拗に眠気がきて
かび臭いコンクリートブロックの冷やかさに安心して眠るのだった

暑さをほどくように
ヒグラシは小走りに夕刻を知らせ
ふと外を見ると
いつの間にかみんなが遊んでいる

何かから逃れるように僕らは
あちこちにある風を捕まえては遊んだ
いつも暮れる一日のようなあきらめを
瞳の奥にたくわえながら
もう、ひらかれることがなくなった開拓村の
僕らだけの夏休みを過ごした


自由詩 夏休み Copyright 山人 2022-03-10 17:53:00
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