祈り
山人

夜明け前の無人駅のプラットホームには
四つの外灯が立っている
ホームにはうっすらと淡雪が積もり
橙色のあかりに照らされ
乱反射していた
その風景は孤独ではあったが
絶え間なく降り続いた
雪の冬を耐えてきた安堵感に満ちていた

プラットホームの近くには
川に向けて掘割された雪捨て場がある
そこに点々と
獣の足跡が伸びている
ホームのおだやかなあかりを一瞥し
獣はしずしずと立ち去ったのであろう

寒村の無人駅
そのたち振る舞いは力強く素朴で
永遠に世界の平和を祈るかのように
静かにたたずんでいた



自由詩 祈り Copyright 山人 2022-03-04 06:43:22
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