流れ星の記録
室町

昨夜
わたしの安っぽい円筒ケースに
星の化石がまたひとつ
コトンと堕ちて
その音は世界を青く染めた

わたしは目を覚ますと
薄明のなかを病院へと急いだ
彼女はにっこり笑って
わたしを迎えてくれた

「どうしたの」
「わたしがだれかわかりますか」
「さあ、友だちはいっぱいいるけど
顔を知らないの」
「あなたの恋人ですよ」
「そうなの」

「あなたが亡くなられたと聞いて
矢も盾もたまらず参上したのです」
「このとおりピンピンしててよ」
「やっぱりデマですね」
「やっぱりデマですわ」

わたしは星の化石がはいった
ポリ容器を彼女に見せた
「昨夜ここにあなたが堕ちてきて
世界が音を失くしたのです」
カラコロ

「わたしが堕ちるものですか」
「そうですよね」
「まだ三十七よ」
「そうでしたね」
なぜかわたしは哀しくなった

すると塩ビが突然炎上をはじめ
めらめらと燃え上がった
「あなたが生きている限りわたしも永遠でしょ」
わたしはひっひっひと笑った

こうしてわたしの新しい円筒ケースに
不滅の星がひとつ
加わった



自由詩 流れ星の記録 Copyright 室町 2022-02-05 04:25:26
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