二月の帰り道
番田 

昔僕は雲の下を見つめていた。営業車を入り口に残して、浜辺の上を真っ直ぐに歩いてきた。夏の間はあれほど人で賑わっていた海の家も、廃墟のように、このあたりの景色が望めるような店の壁が同じ場所にはあるだけだった。


友人と夏の間、その、壁の向こうに海水浴にやってきた時のことを思い出す。僕の頭にかけたホースの冷たかった水と、網で焼いて食べた熱かったホタテの味。白い肌で、レジャーシートの上に空が暗くなるまで寝転んでいたものだった。



日は少しだけ、曇っていた。雨が降りそうであるというわけではない。あの日一緒にいた友人とも疎遠になって、もう、何年たってしまったのだろう。白い漁船のシルエットが遠くに見えたような気がしたけれど、あれは、たぶん波しぶきだったのだと思う。


散文(批評随筆小説等) 二月の帰り道 Copyright 番田  2022-02-05 01:45:39
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