雪のさだめ
st

猛烈な冬の寒波に見舞われた
はるか上空の雪雲のなかで
ひっそりと生まれたのは

ちいさなちいさな
六角柱の結晶たち

雪雲の中を風に吹かれて
上昇したり落下したりと

いろんな雪雲の中を通り抜け
みんな楽しそうに暮らしている

やがて
雪の結晶たちは大きく育ち
ふるさとを去る時が迫ってきた


きみたち
キラキラ輝く宝石たちを
たくさんくっつけて

とってもきれいで大きくなってきたね

そろそろ
下界へおりてゆく準備をしなくちゃぁね


雪雲の母さんが
雪の結晶たちにささやく

あんなきたない下界におりてゆくなんて
いやだなぁ

もっと長く
母さんたちの中で暮らしたいよ


雪の結晶たちが
雪雲の母さんに泣きついた

バカいってんじゃあないよ
下界の金満人間みたいなことをいってると怒るよ

下界じゃあ
金持ちになればなるほど

幸せになるってゆうけど
ここじゃあ通用しないよ

宝石がふえて重たくなったら
下界へ落ちるのがさだめなのさ

あんなによごれた下界だから
それを浄化するために

神様が創られた尊いシステムなのさ

でもね
浄化がおわって水蒸気にかわり
再び身軽になったら

上昇気流でここに戻れるよ
それまでの辛抱さ

下界の人間だって
お金はもちろん


その体さえ捨て去って


魂だけの身軽さにならないと


この天空には昇れないのさ







自由詩 雪のさだめ Copyright st 2022-01-24 05:57:35
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