教室
たもつ



僕らの旅は午後の教室から始まる
机の上ではまだら模様の教科書が青い空を目指し
ゆっくりと羽化している
君の強固な筆入れは中身がすべて行方知らずの風紋
象が踏んでも壊れないけど
涙の一粒で簡単に崩壊してしまう
歴史の教師が律令制度に意義を唱えている間
僕らは残しておいた給食のパンを食べ終え
さあ、外へ行こう

昇降口への地図が生臭いのは
日直になれなかった僕らの汗腺が付着しているからだ
学級委員が副委員とよろしくやりながら
左手にできた水イボを潰すことに余念が無い間
さあ外へ!外へ行こう!
歴史の教師はまだ開国されていない浦賀沖に向かって
遥か遠泳をしているぞ
手紙を回せ!
僕らが無駄に生きてるのではないという証に

校庭の隅で積んだクローバーがすべて
四葉だったので恐くなって焼却炉に投げ入れた
いったいあれはいつのことだったか
そのように思い出そうとすると
僕らの旅はいつもそこで終わる

そしてまた
教室は旅を始める



自由詩 教室 Copyright たもつ 2005-04-29 21:32:12
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