泥
あらい
なにもありゃしないのに、主は
我侭に置いて乾きを春と架け渡すと華を添える
その情火
充てがわれた詫び状のほかに展翅に及ぶ
蒼白の空、開け放たれた単眼の先を膨らませ
歪められたヒナギクの白痴美、屏風の前で色を掃く
腐食した意思は、巌のような所懐を絡み
薄く引き伸ばしただけの命が貪り合い
地獄に駆り立てる
紙一重
分解されかけた軀が、元に戻ることはないように
見ず知らずに訪れた劣等亭に誘い込む
平らげられた活餌に齧り付かれる耳朶は盲目的に
なにかを、
壊滅した差異の余韻がざらついた手で蠢く
あらかた友のような温みを丸め込んで、誑し込む
躍らされた獣が唸るように、仕向けられた猫なで声は
中心から外れた幸福が首を落として
ドグマに陥る
埋め合わせた体を、引き寄せて差し出す蝴蝶に従い
なにかを妊み出す、人婦は妖精を 妖星は夭逝を
ただひたすら虚空に置き 祈る
陰と陽、息とし活けるものをかなぐり捨て
それで死出の旅と用足されるが
反目し合うノイズは
夥しい汚辱を宿したまま
彩雲を残すように現実から飛翔する
生臭く不明瞭の朧月夜に、千鳥足で