宝石の虫
秋葉竹
昔みた夢を忘れられない朝
あたたかいだいだい色の朝日が染める街
いつも同じ時間に同じ橋を走る人
知らない彼にシンパシーを感じ
けれど新しい自由を求めて走る
いつか幸せにたどり着く夢をみて
胸の骨がきつく痛む恐怖に耐える
夢が叶うなら憶えていてほしい
地を這って土を掻きむしっている宝石の虫を
陸橋を通り過ぎる鉄の塊が殺した宝石の虫を
友に裏切られ陸橋から飛び降りた宝石の虫を
けれど夢を叶える方法も知らないのに
その虫たちのおかげでいつまでも夢をみられる
それを希望と呼んで前を向いている
そんなときふと子どものころ
憧れた魔法使いを思い出し
だから今日も全身真っ黒な格好で
仲間を探して空を見上げている