運動 それから
ふるる

かまぼこのカーブはいつまで美しいだろうか

遠くに霞んでいるトンネルの入り口
小雨が降りはじめ暗い匂いがする 
黒く濡れた何かが静かに入ってくる

そんな車からさっと降りた
姉さんは真っ白い日傘をさし
もう夏なのね、ねえ笑ってよと笑う

こうしてこだまする懐かしい場所さえあれば奏でられる
色々な音色が出るという笛を片手に
サーカスの熊使いよりも上手に

やれやれと肩までつかっていた秘境の温泉
湯気ではっきりとは見えないけれど
もわもわした気分はすっきりと晴れて

こんなにもふわふわに乾いた綿ポリ レーヨン キュプラ
反抗期だからなかなか喋らないし
夕暮れ時にはほつれ始める

そんなこんなで気まぐれに子らは遠くの森へ
そこでも都市化は進んでいてお湯はたっぷり出る
魔女の残した鍋はぽっかり穴があいていた

それでうっかり蒸気に指をさらしやけど
呼び鈴が呼びやけどの指が印鑑を探す
その強さが素直さとつながっている

つまりこんがらがっていた仕事も無事にほどけたし
昨日のカレーも美味しくなっているし
猫みたいに伸びしてあったかい布団でほぐれるし

ところで飛んでいってしまった人には
望みのないはかない恋だったと
言いたかった花言葉のような言葉を

そうそうかまぼこのカーブは分からないけれど
運動であり自己破壊でもあるという
読むという行為は
(今のあなたのように)
いつまでも美しいと言える

それから








自由詩 運動 それから Copyright ふるる 2021-12-18 21:01:22
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