空に湖のある
ふるる

空に湖のある場所に引っ越してから
薔薇は世話が大変だと知った
この土地は気にいるかな君は雨が好きだから

素直な枝と同じに左右に分かれる道があった
僕たちはやがてはなればなれになり
優しく雨が降れば思い出した

後悔や悲しいことも過ぎ去り
忘れて変わっていくことに慣れていく
薔薇だけは毎年忘れずに咲き棘は細く光り

激しく降り始めたは雨は多分しばらく続く
昨日から乾いた咳が止まらない
濃い蜂蜜を舐めても喉はうずく

住む所の良し悪しは気にした事がない
咲かない蕾みたいな家だった
こだわりのかたまりみたいな君には似合いそうもない

走り出すのは翼を持つ君だった
僕は生まれてはじめて本当に焦って君を追い
本当に危なかったら全身で止めた

君が言っていた丘はここからは遠い
そこから見る夕焼けは君の言うとおり
この世の果てみたいにゆらめいて儚い

こんなふうに手紙を書くのは久しぶり
揺れる字の感じから感情が伝わると
自信のなさもばれてしまったり

再び会えた君はやっぱり楽しい人
意外な物の見方をして笑い声も変わりなく
僕の後悔を虹が消えるように払ってみせたりと

薔薇に興味はない君を引き留める重さはなく
小さな手と握手をかわしてまた別れる
もうすぐ雨が来るわと言われて上を向く

湖は変わらずに空にある






自由詩 空に湖のある Copyright ふるる 2022-02-03 12:00:58
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