ほころびショール
あらい

その濡れ羽鴉が影一枚 羽織った面妖のピエロを炙り出す
柊の夜。大口を開けグロテスクな無垢な施しを与えん

おおぶりな川のせせらぎは寂しげに演舞を受諾する
手あぶりに凍りつく患部に聞き伝えの罪を着せ曇らせ
狂騒のひかりの屈折でねじ曲がった行幸を独唱して芽吹く

春浅い、無名の少年はもうすぐに門出を迎え腑抜けにも奇怪だ

あかつきのショールは頬骨に囚われ隻腕にゆんで視姦する
半透明のうたかたを夢見るようにふらつく太陽を知る
足元に日の輪くぐりの虎をかい、背の低い狼に慕われ、
銀の巻毛がくるくるとよく動き、光彩を疾走らせる

それでいてしなやかな薄靑の下でひとりぼっちか

まま無明のベーゼはためらいを想い親しまれる鐘を鳴らし
麦色の草原を駆ける栞には潤色エモーションを天蓋から
吹き付けるはなびらにも素朴と腐った沁みをしつらえた虚飾を
燭光に額づく テクスチャーの荒れたブーケに翳す。

結合した光と熱を放ち、それでも
「あなたのつがいは生まれない」
白紙の回想録はらはらとめぐり来る
銃口を差し向け酔いが覚めるまえに

染斑の頂にて馥郁の喘ぎに満ち、天を焼き地を焦がすわたしは
灰燼を指先に潜ませ、内気な世界は今何処へ腑に落ちて
黒焦げの背には未来の恋人たちにさちあれどを免罪符を贈る 

いつから、どこまでを大人と いとおしめればいいのか、

朱に染まる原石の一面に薄気味悪い笊に轢く贈与は
真水に溺れる、呑み干して服従する流星は跳ね起きたという
感覚的愛にわがままに抱かれ命を吹き込まれた
萎みかけた風船を手に取り蘇生する見分はぼんやりと浮き上がった

その内側に棲む紙魚に笑いかけ、何処かへ征こうとする
溶け出した軀に変える瀰漫は錦織りなし今此処へ
風光明媚な絵空しかない、それでも信じれば微熱程度の、君。


自由詩 ほころびショール Copyright あらい 2021-12-14 23:23:56
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