指フェチの夢想、連弾
坂本瞳子
繊細な指先が愛惜しくて
ページをめくって欲しい
書き出される文字よりも
あの美しい指で握られた万年筆が気になる
約束なんていらないけれど
あの小指とならばつながれたい
雨が降り出したら
かの指先で傘を開いて
アイスコーヒーでもアイスティーでもいい
その指でストローの袋を切り裂いて
ほかよりは少し骨太の親指ならば
リングをまとっても良さそうだ
ネクタイを首に巻くよりも
その優雅な指先に絡ませて
その指の冷たさは小銭にも移るだろうか
いや、紙幣やカードではなく
あの指に結ばれる靴紐は
そしれ留められるボタンは
エレベーターでも信号機の待ちボタンでも
見かけるとあの指先を思い出す