虹を待つ少女
st

雨上がりの後に時間があると

少女は
いつも散歩にでかける

行く先は
街の高台にある
見晴らしのよい公園

ベンチに腰掛けて
虹のでるのを待っている


今日もまた
いくら待っても虹がでない

悲しくなった少女の瞳が
うるんできたその時に

どうしたのお嬢ちゃん


初老の紳士が話しかけてきた

虹を待ってるの


少女が答えると

虹なんかめったにでないよ
今日ももうでないと思うよ

いつもここにいるけど
そんな理由があったのか


少女を見つめると
少女の瞳から
涙がこぼれ落ちた

何か深い理由がありそうだね
話せば楽になるかも知れないよ


紳士が少女を諭すと
少女は語り始めた

好きだった男の子と
この公園で遊んでいたら

突然にわか雨が降って来て
ずぶぬれになってしまったの

晴れたあとで
あの山のあたりに

きれいな虹がでていたから
二人で秘密の約束をしたけど

それからしばらくあとに
彼は病気で亡くなってしまったの

悲しくて悲しくて
思い出のこの場所に来て

虹がでるのを待っているの

だって
彼が虹の道を通って
逢いに来てくれるかもしれないから

すると紳士は笑いながら

なんだ
そんなこと簡単さ
丁度今日は虹のでるカメラを持ってるから


カメラをしばらく操作してから

さあ見てごらん
あの山のあたりに虹がでているはずだよ


少女にカメラを渡すと

ほんとだ虹がでている


驚いて少女は紳士を見つめる

このカメラには
一番きれいな虹がだせるという

魔法のようなレンズがついているのさ

このカメラを貸してあげるから
あの光に向かってのぞいてごらん

この時刻なら
いつでも虹がでるはずさ
返すのは君の好きな時でいいから


少女にむかって微笑んだ


あとからわかった事だが
この紳士は

宝くじでも当たったのか

と思わせるような
評判の金持ちで

カメラやレンズを
数えきれないほど持っている


大学の講師も務める


プロの写真家だった





*****プロフィールに写真があります******


自由詩 虹を待つ少女 Copyright st 2021-11-24 07:24:43
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