まんまるかじつ
あらい

隣り合う、背にして、ただ微笑む 貴腐の林檎がある

    あなたを犯している。影はもう捕らえられて、
         眩しくて、見上げることも、ない

     わたしは
     とけて
     おちて
  ふれたように ひとみに宿る、

 そのときだけでも、満ち欠けるようにして 過ぎる
   なんてこともない、ときは同じに流れて いく。

  月がきれいですね といえば愛だの恋だの

    羞恥心の盃は 暗雲の向こう側へ
     胸いっぱいに咲かせてしまう

        (水鏡を齧る)

  口に出さずとも素直にならずとも 人々は、
     満更でもない夜を詠える。
  壊れない思春期を 巧妙化するおせっかいを 
    卑屈な微熱で 充満する 

 彼方への溢美は。   敬意を賞するだけ
 普段着の満月が騒ぎ立て   殊更、蝕まれるだけ、
       ひかりに呑まれていく

          ぶっちゃけ拘置された歳時記が、
        くすぐったい呪いと飛び交い 
壁を突き抜ける、ユーモアではないかと

          色変わりした絵葉書にひとこと
             劇薬、と書きつけている


自由詩 まんまるかじつ Copyright あらい 2021-11-20 09:29:07
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