馬鹿
トジコ

ひとりぼっちは
毎日、蟻の列を眺めていた


ひとりぼっちは
毎日、近所の猫とじゃれていた


ひとりぼっちは
夏休みにお婆ちゃんから貰った
花火の詰め物が勿体なくて
湿気るまで抱えて離さなかった


ひとりぼっちは
お盆に田んぼで捕まえた
おたまじゃくしを
一匹だけ水槽で飼い始めた


雨の日は水槽ごと外に出せば
喜ぶと思っていた


誰も教えてくれなかったから
蛙になっても水槽は満杯だった


ひたすら平泳ぎをする蛙が
とても元気に見えた


ある時ひとりぼっちは
死んだ蛙を手ですくって
ポロポロ泣いた


ひとりぼっちは
蛙を魚だと思っていた

だから
土に埋めるのが可哀想で
蛙を川に流してあげた




ひとりぼっちは
ひとりぼっちのままだから
心が綺麗だった


今の世の中じゃ生きづらい程に
真っ白だった


自由詩 馬鹿 Copyright トジコ 2021-09-06 22:36:02
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