ワクチンの詩
妻咲邦香

私の家だと思っていたものは
貴方の家でもありました
「お帰り」と聞こえた気がして
戸を開けて目にしたものは
みんな知っているものばかり
なのに
みんな
私を初めて見るような目をしてた

ずっと一緒にいました
大切な人でした
笑った時の目尻の皺が大好きで
知らない世界を惜し気もなく見せてくれた
私は貴方になれるのでしょうか?
少しの痛みで済むのなら
なってみたいとも思えて来て
それでもまだ怯えているんです
それでもきっと
明日は大丈夫だと
言いたいのです

幾つか夢もあったけど
全部置いて来ましたし
ひとりでも寂しくはなかった
けれど寂しさを覚えるために今
「ただいま」と小声で言いました

聞こえたでしょうか?
次の言葉を
待っています


自由詩 ワクチンの詩 Copyright 妻咲邦香 2021-07-13 17:23:21
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