往診の思い出
板谷みきょう

精神科病院で往診の依頼がある時
外来診療で終わる場合は
外来の看護師が医師に同行し
入院が必要と思われる時には
病棟の看護師が同行していた

救急車を運転する職員と併せると
往診は三名で行っていた

民生委員からの連絡を受け
警察官の依頼で往診に出掛けた先は
隣町の繁華街の外れ
飲み屋街の路地裏だった

飲み屋の二階
七十路は過ぎている独居の老女
ゴミ屋敷状態の中で
数匹の猫を飼っていた

昔は
遊女として稼いでいたらしいが
今でも街娼をして
何度も警察の世話に
なっているという

生活困窮者の独居老女で
再三の生活援助も
頑なに拒否し続けて
猫と一緒に
破綻した生活をしていると

親族も無く
認知機能も低下して
不潔な状況を
改善することもできないと

往診した医師の問診を受けて
老女は
強い拒否も無く入院となった

その後
猫たちは
どうなったのだろう


自由詩 往診の思い出 Copyright 板谷みきょう 2021-07-13 12:27:40
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