来いロシナンテ
TAT
例えばフィンセント・ファン・ゴッホが
生前に一枚の絵も売れなかったように
カフカのように
俺の才能は凄すぎて
現世に生きる二流三流どもには
上手く把握しきれないだけだ
ゴッホの時代にも
絵がよく売れる
金持ちの職業画家は五万といて
けれどもそんな雑魚達の名は
今はもうどこにも遺ってはいない
今ではジュンク堂や紀伊国屋で
取扱いされているのは
ゴッホの画集だけだ
だから結局は自分の魂と
自分との戦いだけしかないんだよ
そりゃあ
シニカルぶって
自分が死んだ後の名声なんか
自分には関係ないから
現世を楽に生きれる
金を稼げた方が
単純に良いに
決まってるじゃないか
と
高価いポロシャツ着て
嘯くのも正解は正解だが
それじゃあ
サバンナのライオンと同じさ
人間じゃない
人間てもっとこう
ウイスキーみたいに
澱とか色々入り交じって
石油みたいに深いもんだろ?
そうやって自分を慰めるしか
もう道はないんだ
最期の麻薬なんだよ
けれどもそのようにしてでも
どんなに滑稽で愚かしくとも
それでも死なずに
石を噛んででも
石に口をすすぎ
流れに枕して
ドン・キホーテのように
生きるんだ俺は