鉛筆
アンテ


テスト用紙の四角い枠に答えを書こうとすると
鉛筆の芯がぼきっと折れた
クラスメイトの鉛筆が
かりかり音をたてて問題をといていた
ふで箱をあけても
先のとがった鉛筆はもう一本ものこっていなかった
ひとつのこらず折れてしまって
木のとげとげのまんなかに
芯のかたちの穴があいていた
先生は大きな木の定規を振りまわしながら
教室じゅうを行ったり来たりした
木のとげとげの部分を
爪でむしると
木が指に刺さって
びっくりするくらい血が出た
テスト用紙のうえに落ちた
クラスメイトはつぎつぎと
問題をときおわって
先生に答え合わせをしてもらって
運動場へ遊びにいった
木をむしればむしるほど
指が切れて
ぽたぽた血がテスト用紙におちた
それでも芯はでてこなくて
しかたないので木を噛んでむしると
血のヘンな味がして
やっと芯がすこしだけ出てきた
さいごのクラスメイトが
運動場へ遊びにいってしまったので
教室にいるのはわたしと先生だけになった
何度も何度も木を噛みちぎって
やっと字が書けるようになったので
問題をとこうとしたけれど
テスト用紙は血や木くずでぐちゃぐちゃで
問題を読むこともできなかった
先生は大きな木の定規を振りまわして
わたしの机をごんごん叩きながらどなった
鉛筆をもつと指の傷がずきずき痛くて
血でよごれた枠に答えを書こうとすると
鉛筆の芯が折れてしまった
口のなかが血の味できもちわるくて
テスト用紙におえっと吐いた
先生は腕をぶるぶるふるわせて
息をはげしく吸って
大きな木の定規をまっぷたつに折った
怒鳴りながら
教室のドアを指さした
チャイムが鳴って
クラスメイトたちが運動場からもどってきて
楽しそうにおしゃべりしながら
席に着いた
とがった鉛筆を
邪魔くさそうにふで箱にしまった




自由詩 鉛筆 Copyright アンテ 2005-04-23 18:48:46
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びーだま