tell me, bedtime story
中田満帆


 かの女は夢の隠語
 かの女は愛の代名詞
 そしてくずかかったおれを見棄ててしまう、
 見殺してしまうなにかだよ、「ユカコ」
 バウハウスの故郷の果てで摘み取った林檎が、
 葡萄でなかったという理由だけで射殺される未来にまで
 かの女は侵入しようとするのか、おれにはわからない
 38wの灯りのなかでいまは目ざめようとする犯意なら、
 大聖堂にかけてやれるから、
 まだ大丈夫だ

 現在が到着する
 神とともに谷上線へと登る
 ぼくという一人称がまったく不確かなところで、
 きみがきらう、このぼくが再臨して羽衣をちらす
 もちろんのこと、ローズマリーと一緒くたに
 かの女は夢の代名詞
 かの女は死の夢魔
 そしてくずれかかったわれわれに灯す、
 ささやかで、火花みたいなかたおもいだった
 いずれ道で黄金が舗装されるとき、
 あの老人と革装本を手に謳う、
 愛の標本、
 まだ大丈夫だ


自由詩 tell me, bedtime story Copyright 中田満帆 2021-05-17 12:50:42
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