真夜中の樹
塔野夏子

真夜中の真ん中に
透明な樹がある
繊細にひろがるその根は
夜の宙に満ちている星々の気を
吸収する
その気は幹をとおり
繊細にひろがる枝葉から
放散される

樹の中をとおるあいだに
星々の気は夢を帯びる
だから樹が吸収と放散の
めぐりをとめどなくつづけることで
夜の宙に夢が満ちてゆく

夜の宙に
夢が満ちてゆく

その夢は
やがて誰の眠りへと降るのか
それを知ることもなく
真夜中の真ん中に立つ樹は
吸収と放散の
めぐりをただしずかにつづけている



自由詩 真夜中の樹 Copyright 塔野夏子 2021-04-27 12:00:36
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