暮しの手帖4月号
花形新次

昔誰かが
口にしたような台詞を聞くと
胸がざわついて
ナイフでそいつを
刺す衝動にかられる
やらないのは
生活のためだ

俺に生活さえなければ
俺はもっと傍若無人に振る舞って
堂々と死刑台に登って行けるのに

「俺の名前を言ってみろ」
奴らのこめかみに22口径を突きつけて
そう問うてみる
答えられなければ
脳髄が飛び散るだけさ
俺のことを知る人間は
家族の他ほんの少しだけだから
残念ながらほとんどの奴は
地獄行きになる

女だって容赦はしない
ただ撃つ前に銃口を咥えさせるだけだ
しかしブスにはやらない
想像するだけで反吐が出る
清浄するのに
ファブリーズ一本でも足りないだろう

やはり
何処かで聞いたことのある台詞が
オリジナルより悪くなって使われている
生活に縛られて身動き取れない俺を
嘲笑うかのように

まあいい、それも俺に生活があるうちだ
それまでその恥知らず行為を続けるがいい





自由詩 暮しの手帖4月号 Copyright 花形新次 2021-04-27 01:16:57
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