フランスの暗闇で
番田 

昔、僕は四月に、マルセイユを訪れていたことがあった。銃を持った軍人とすれ違うほど治安が悪いとされる街に滞在し、経由しないことには、モナコやカンヌといった見どころの多い街にたどりつくことはできなかったからだ。僕は一旦空港で降りると、来るのかどうかもはっきりしない高速バスが来るのを、ぼやけた夕暮れの空の下で待っていた。失業中だった僕の心の中にも似ているような気もさせられた風景だったが。僕はそこで待っていると、バスはやがて目の前にやってきたのだ。そして、山に浮かんだ光の流れる風景の中にいた。僕は疲れ果てていたのだが。


街についた僕はさらに宿を探すのに苦労させられていた。暗がりの中で、見知らぬ女に道案内をたのむと変な場所に連れて行かれた。彼女は優しかったので、チップはそこまでせがまれなかったのだと、後で気づく。僕も旅行自体の経験が浅かった。しかし、僕のことを警察にまで連れて行ってくれた。ただ、思い出すと、僕の目の前にはおかしな女性警官がいたのかもしれない。よく、検索の仕方もわかっていないようだった。僕の疲れは限界にまで来ていた。予約していた場所の滞在はあきらめ、駅前の宿に泊まった。そこには子供のような背丈の店員がいた。彼が何系の人種であるのかということを、少しだけ、僕は考えさせられていた気がする。髪は、金髪ではない人は多い。ベッドにたどり着くと死んだように眠りに落ちていった。


散文(批評随筆小説等) フランスの暗闇で Copyright 番田  2021-04-24 01:20:13
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